ミステリアスな「時間からの影」で観衆を深く暗い幻想の世界へ案内したかと思えば、「夜間飛行」では、和嶋の操るテルミンと鈴木の歌声が何とも言えない浮遊感をもたらす。こうした楽曲の直後に聴く「品川心中」の飄々とした語り口と物語性も絶品だ。
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人間椅子ならではの極上グルーヴが炸裂した「どだればち」は、本公演のクライマックスのひとつ。この曲から放たれる津軽の情念は、過ぎ行く晩夏を回想するにふさわしい。
物悲しいハーモニカの音色を交えながら人生のわび・さびを重厚に表現した「野垂れ死に」や、ラヴクラフトの小説から着想を得た神秘的な「ダンウィッチの怪」など、人間椅子マニアの心をくすぐるような選曲も痛快だ。
本編も後半に突入し、場内のテンションは高まるばかり。人間椅子の新たなアンセムとでも呼ぶべき「命売ります」では、「バラババンバ バラババンバ」のサビを嬉々として合唱するオーディエンスの姿が目に飛び込んでくる。
メラメラと燃え盛る「心の火事」も景気がいい。こうした力強い楽曲に連なる「黒猫」の余韻には高純度のおどろおどろしさがあり、彼らの怪奇趣味が存分に感じられた。
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本編終盤は一段と大爆発。ナカジマがパワフルにドラムを叩きながら歌う「悪夢の添乗員」を合図に、観客はさらに気合い十分だ。
続く「地獄の球宴」の轟音で一気にフロアは揉みくちゃに。そんな熱気を季節外れの「雪女」が妖しくコントロールすると、最後は一発「針の山」。お馴染みのこの名曲が盛大に着地した瞬間、オーディエンスからは惜しみない拍手と歓声がステージに向けて注がれていた。
観客はまだまだ帰路につくわけにはいかない。和嶋、鈴木、ナカジマの3人が笑顔でステージに戻ってくると、フロアの熱は再び上昇。アンコール1曲目は、これまたレアな「辻斬り小唄無宿編」だ。小気味よさと孤高感が絶妙にブレンドされたこの曲には、問答無用の趣きがある。
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鈴木がバイクのハンドル部分を改造した”地獄のハンドル”を操り、ナカジマがこの日のために用意した巨大フラッグを振る。そんな「地獄のヘビーライダー」に圧倒的な馬力と疾走感を見せつけられた観客は皆、大満足の表情を浮かべている。
