三島の回想シーンでは、アンサンブルたちが次々と小物を使って劇中劇や過去の思い出シーンを再現していく。三島役の北川の芝居はもちろんだが、それ以上にアンサンブルたちの動きや芝居が大切となるシーンだ。小道具のどこを持って運ぶのか、手の位置やハケ方まで細かく小林が演出をつけていく。1シーンだけしか登場しない人物のキャラ付けもしっかりと行われ、一つのセリフも手を抜かずに作っていた。
その後、劇中で歌われる歌とダンスの練習も行われた。まずはキャストたちが音楽に合わせて踊ってみせる。前日に覚えたという振りだが、北川と小田はすでにしっかりと形になっていた。小林は、その場で次々とミザンス(立ち位置)を決めていき、ダンスを完成させていく。富塚から「エアーギターをしてもいいですか?」と提案が上がると、即座に採用し、エアーギターが生きるパートを作る。アイディアに溢れた小林が次々と演出をつけていき、あっという間に1曲完成した。
稽古を通し、北川が長ゼリフを難なくこなし、堂々と芝居をする姿に主演としての存在感を感じた。この日の稽古では小田の登場シーンは少なかったが、クールにクイズに向き合う本庄の姿も印象深い。物語全体を通してどんな芝居を見せてくれるのか期待感が高まった。
また、この作品の面白さは、三島の思考を「クイズバカ」「分析」「自信」という三人の人物によって表現しているところにもある。三島が話していない場面でも思考を担う三人が頭の中を解説してくれるので、三島の視点に立って物語にどっぷりと入っていくことができるのだ。
北川と小田の歌唱シーン、キャスト全員によるダンスシーンも随所にあり、見どころ満載の本作。本編後にはオリジナルストーリーとして三島・本庄それぞれの未来についてのマルチエンディングも入る予定なので、何度でも楽しみたい。