一方の久須美氏は、造り手の視点から「日本には大きく3つの特徴がある。ひとつは歴史が非常に長いということ。縄文後期、稲作文化が日本に入ってきてから5000年の歴史があり、日本人の知恵が凝縮されている。例えば日本酒造りに使う麹菌は、日本人が1000年かけて目に見えない微生物を家畜化して安全に使えるようにしたもの。もうひとつは、とてもエコな食品であること。原料が米で、精米後の米粉はせんべいなどの材料に、絞った後の酒粕は栄養的にも優れた伝統的な食品であり、一升瓶はリサイクルの最優等生。捨てるところがない。3つ目は、日本人の生活に密着しているということ。冠婚葬祭などでも、必ず日本酒は飲まれる」と解説し「日本酒は最も造るのが難しい酒であり、繊細で奥深い味わいが料理と一体となり、口の中で新たな旨味を作り出す"口中調味"は、日本独自の食文化として世界的に注目されている」と熱弁した。
橘ケンチは、そんな二人の話を受けて、「日本中に様々な蔵があって、それぞれが独自の哲学を打ち出して酒造りをしている。音楽業界でいうと、それぞれの蔵がアーティストのようなイメージ。しかも、日本酒は地域に根付いていて、その土地で作られた酒がその土地の飲食店に卸されて、シェフがその日本酒に合わせた料理を作る、という感じで、日本酒を軸としたネットワークが形成されている。そこに面白さを感じる。実際に日本中の蔵を回って、様々な人々が切磋琢磨して一緒に夢を追いかけている姿に感銘を受けた」と、改めて日本酒と日本酒に携わる人々への敬意を示した。
イベント終了後、橘ケンチに最近オススメのペアリングについて話を聞くと、「『赤星とくまがい』で出してもらったクリームチーズと『射美』のペアリングが衝撃的に美味しかった。チーズはクセのある日本酒にぴったり」と教えてくれた。
『第3回横浜高島屋日本酒まつり』は、4月8日まで開催中。橘ケンチも食したペアリング「赤星慶太&久須美賢和 3種の料理と酒が醸し出す味の物語 華の章」は、2,501円で楽しめる。