釜山国際映画祭へは初参加となった小栗は、「こんにちは!この作品で釜山国際映画祭に参加することができて嬉しいです!皆さん、サランヘヨ!(愛しています)」と、時折隣にいるヒョジュに耳打ちで教わりながらも韓国語でしっかりと挨拶。会場にも「初恋は小栗旬でした」と熱いメッセージを送るファンがいるなど、韓国でも熱狂的な人気を誇る小栗は、黄色い歓声が送られると思わず照れ笑いを浮かべる場面も。
そして、国内外で圧倒的な知名度を誇り、韓国を代表する俳優の1人でもあるハン・ヒョジュは、白シャツにデニムというシンプルな出で立ちながらも、その圧倒的な美しさと存在感に客席からため息が漏れるほど。上映されたばかりの本編さながらに、大人の2人の、自然体ながらもどこか可愛らしい雰囲気に、会場はあたたかな空気に包まれながらイベントはスタート。
作品を見終えたばかりの興奮冷めやらぬ観客たちからの質疑応答を中心に繰り広げられた本イベント。令和の時代に大人のロマンティックコメディを見事に体現した小栗とヒョジュによる、主人公とヒロインの役作りからトークはスタート。
ヒョジュ演じるハナは、幼い頃から人の目を見ることができないという秘密を抱えているという難しい役どころ。観客からその役作りについて聞かれたヒョジュは「視線恐怖症というと重い悩みに捉えられてしまうかもしれませんが、実は誰もが少しずつ持っているものだと思います。私自身のケースでは、長年俳優活動をしていますが、役を演じているときよりもハン・ヒョジュとして人前に立つときの方が緊張します。そのような時に逃げ出したい瞬間がたくさんあるのですが、その気持ちをハナが抱える悩みに投影することで、役を作っていきました」と、自身の感情をうまくキャラクターに乗せることでヒロイン・ハナという役を演じていたことを明かした。
対する小栗演じる壮亮も、実は人に触れられないという秘密を抱えている。ヒョジュと同じく難しい役どころを演じた小栗だったが、【壮亮の中に引かれている線引き】を明確にすることで、そのキャラクターを演じながら飲み込んでいったという。小栗は「壮亮が温泉に入るシーンがありますが、壮亮は(他人が入った可能性がある)温泉に入れるのか、入れないのか。撮影現場でも真剣な議論を交わしました」と、細かいルールを決め検証していくことで、キャラクター像を明確にしていったと語った。
そんな2人が試行錯誤しながら挑んだ本作「匿名の恋人たち」は、制作陣も世界で活躍する日韓のトップクリエイター陣が集結し制作された為、撮影現場でも様々な交流があったと明かす。
ヒョジュは日本語での台詞まわしに、多くの努力を費やしたそうだ。ハナは10年ほど日本に暮らしており、その中で壮亮に出会うという設定。ハナを演じるヒョジュの台本には、作品の中でもほぼ日本語の台詞が当てられていたが、「母国語で話すときの2倍3倍のエネルギーを使います」と大きなプレッシャー下での撮影だったと振り返る。元々日本語に馴染みはあったものの、10年間日本に暮らしていた人が話す日本語がどのようなものか、監督や日本語指導の先生、そして小栗と日々相談しながら調整をしていったそうで、そのひたむきに努力し続ける姿に小栗も「本当にすごく頑張ってくれたヒョジュの存在が大きかった」と絶賛。
対する小栗が衝撃を受けたと明かしたのは、2020年のアカデミー賞・作品賞を受賞した「パラサイト」の制作にも携わったイ・ハジュン氏の存在。ハジュン氏はプロダクションデザイナーとして本作に参加しているのだが、小栗はハジュン氏より、「クランクインの前に物凄く分厚いコンセプトシートを見せてもらいました。そこに作品の世界観や自分の役についても彼のイメージが詳しく書かれており、そのおかげで作品への理解がとても深まりました。初めての体験でした」と、Netflix作品ならではの体験を振り返った。
役者陣のキャラクターへの深い理解と、日本と韓国のトップクリエイター陣のタッグによる相乗効果で完成した本作だが、会場で一早く作品を観た現地のファンからも「正直なところ日韓ドラマに対して少し不安な部分もあったのですが、そんなこと思っていたのが申し訳ないほど内容がとても面白かったです!そして小栗旬さんはやはりロマンティックコメディがとてもお上手で、演技が素敵で魅力ある方だと改めて思いました!2時間が本当にあっという間に過ぎていきました!」、「ハン・ヒョジュさんの演技が繊細で、お2人とも細かいディテールまで表現されていて胸が温かくなる話でした。当然続きを観ます!友達にも勧めます!」「続きが本当に気になります!配信がずっと先じゃないですか!今の感情で早く観たいのに!!」と、現地ファンも悶絶の熱量高いコメントが届いた。
