続いて「一番好きな作品」について問われると、齋藤さんは入口すぐにあるフランシス・ベーコンの作品を上げ、時代背景をくみ取れ、なおかつ見る側に恐怖感も与えるが、深く考えさせるような点に魅力を感じたとし、「私もアートにとても詳しいわけではないので、そういった人が見た時に色のインパクトや雰囲気を感じ取っていただければと思う。」と語った。そんな実感のこもった言葉は、鑑賞体験の入口を具体的に想像させ、観客それぞれの受け取り方が肯定される展覧会であることを印象づけた。
さらに、90年代の英国カルチャーへの思い入れについては、「学生時代から90年代イギリスのバンドを好んで聴いていたので、当時のイメージは強く残っています」と語った。一方で、本展に携わる中で時代背景を掘り下げていくにつれ、これまで漠然と抱いていた少し不機嫌なイギリス像の奥に、社会の中で複雑にさまざまな出来事が起こり、それに呼応して若い世代が声を上げ、作品を生み出していった動きが見えてきたという。加えて、現地のテート・モダンを訪れた経験にも触れ、「行ったのは20歳前後の頃だったのですが、インパクトのある作品が本当に多くて、詳しくない私でも何か感じるものがあって、すごく影響を受けました。一番影響を受けた美術館はテート・モダンです」と振り返った。「もともとの印象から大きく離れるわけではないけれど、より奥深く知ることができた。もっと90年代のイギリスについて知りたいし、学びたいと思った」とコメントし、作品そのものだけでなく、時代背景や文化のうねりに目を向けたこの言葉は、展覧会タイトルのBEYOND――当時の熱を現在へと接続する視点とも重なり、鑑賞の視野を広げてくれる。
衣装のポイントを尋ねられた場面では、英国ブランドであるバーバリーの衣装を選んだ点にも触れた。色味を抑えつつ素材感やシルエットで強さを出したことを明かした。アートの場に立つアンバサダーとして、作品と空間に敬意を払いながら自分らしさも表現する、その距離感が感じられるひと幕だった。
最後に、これから来場する人へ向けて齋藤さんは、「それぞれの作品には強い意志や気持ちが込められているので、一つひとつが観る人に何か届いたら嬉しいです」と呼びかけた。さらに、「アートは分からないし敷居が高いと感じる方でも、たとえ何も分からなくても届くものがあると思う」と語り、鑑賞の入り口をそっと広げた。あわせて、自身が担当した音声ガイドの活用もおすすめし、作品や背景へを分かりやすくなるよう意識したと語った。


